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地域包括ケアの中での「かかりつけ薬局」の役割とは?

 地域で暮らす人々の主治医「かかりつけ医」が、地域包括ケアの中で重要視されていますが、5月22日に掲載された複数の新聞報道等によると、政府の規制改革会議の健康・医療ワーキング・グループ(WG)は21日の会合で、「かかりつけ薬局の普及を進める方針」を打ち出したとしています。
 各紙によってニュアンスは少し異なりますが、“全薬局を10年後「かかりつけ」に”という見出しの内容もありました。内容を詳細に読むと、「かかりつけ薬局」の定義がよく理解できないことがあります。「門前」薬局については今よりも診療報酬で減額するとしながらも、点数誘導で1人の患者の薬の服用歴をまとめて管理する「かかりつけ薬局」の診療報酬を手厚くし、普及を進めて行く考えだとしています。
 上記を読むと、「門前」薬局は「かかりつけ」薬局と相反するような機能に解釈されてしまいますが、医療機関の「門前」にある薬局でも、患者さんの服薬情報を一元的にきちんと管理されている薬局は数多く存在しますし、これは誤解を招く表現のようにも思います。
 本来は「門前」の是非よりも、一つひとつの調剤薬局の「質」が検証されるべきで、「質」に応じた適正な評価が求められることは言うまでもありません。国の進める政策とは別に、調剤薬局にも第三者評価のような評価基準が必要な気がします。

 2014年の診療報酬改定で、「主治医機能」を評価するものとして、「地域包括診療料」が新設されました。これは「診療所または200床未満の病院」が該当し、「高血圧、糖尿病、脂質異常症、認知症の4疾患のうち2つ以上を有する」患者を対象に算定することが出来ます。包括制で月1回の受診で1503点という比較的、高い点数設定がなされています。そして同診療料を算定する医療機関が院外処方をする場合には、「24時間開局薬局」であることが求められます。地域で24時間対応の服薬指導・管理を行っている保険薬局の場合は、医療機関に対して「24時間対応可能」との情報提供が可能ですし、医療機関がそうした薬局を選択することに関して、療養担当規則上の患者誘導には当たらないことになっています。しかし現実では、同診療料届出のハードルが高いため、算定医療機関は増えておらず、また対応可能な24時間開局薬局もそこまで多くはありません。

 国の描く「かかりつけ医」のイメージは、ある程度、同診療料届出要件と重なるものと考えられます。平成28年度診療報酬改定では今のところハードルの高い同診療料の算定要件が、どの程度に緩和されるのかが注目されるところでしょう。
 特定の医療機関からの処方せんが集中するよりも、より多くの医療機関から処方せんを受け付ける「かかりつけ」薬局への転換には個人的には賛成です。しかし患者視点に立つと、専門特化した医療機関に対応できる「専門」調剤薬局も一方では、必要だという考え方もあります。

 地方都市に在るBクリニックは19床の循環器に特化した有床診療所。小規模ながら数名の心臓外科専門医が在籍し、心血管インターベンション治療では全国的に知られ、他府県からも患者さんが数多く来院されます。車でしか受診出来ない少し不便な立地に在りますが、毎日、外来患者が引きを切らない状況です。院外処方で薬局はBクリニックの門前に立地しているため、殆どの患者さんは当該薬局で薬をもらうことになります。
 循環器系疾患の患者が殆どを占めることから、この薬局の薬剤師は心臓疾患系の薬剤については極めて高い知識を持ち、個別の患者さんに対する服薬指導も的確に行われています。客観的に見ても、心臓系疾患に特化した専門薬剤師の力量を十分に発揮しているように思います。このような専門機能を持つ医療機関の場合は、「門前」薬局で専門性に長けた薬剤師に指導してもらう方が、患者にはより親切だと感じるのです。
 この他、福岡の或る薬局では実験的に、がん患者と糖尿病患者に関して、その2つの疾患の薬剤について特別な教育を受けた薬剤師が担当し、服薬指導だけでなくがん患者への、主に抗がん剤の副作用に関するカウンセリングや、糖尿病の栄養的な指導まで行うようになっています。勿論、厚生労働省としては薬剤師にゼネラリストであると同時に、スペシャリストとしての役割の両方を発揮して欲しいと考えていますが、一人の薬剤師の力には限界があります。

 地域包括ケアの中で「かかりつけ医」と、「かかりつけ薬剤師」、高度に専門特化した「専門薬剤師」が連携しながら、地域完結型医療を押し進めて行くスタイルがあっても良いのではないでしょうか。

(医療ジャーナリスト:冨井 淑夫)

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