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2016年度診療報酬改定をうらなう
~地域医療構想とリンクする内容に

マイナス改定がほぼ確実か?

 先日、80歳以上人口が1千万人を超えたとのニュースが出た。2015年の「75歳以上人口」は約1645万8千人、10年後の25年には2178万6千人と予測され、少子高齢化が急速に進展するのは避けられない。過疎化・空洞化による地方衰退の事態を危惧し、政府も「地方創生総合戦略」の柱として、日本版CCRCのモデル事業をスタートさせる予定だと言う。そのような状況を踏まえながら、私見を交え次期改定について考えてみたい。

 前置きとして、「今年の介護報酬改定と同様に次期診療報酬改定もマイナス改定になることはほぼ確実」であろう。「団塊世代が全員“75歳以上” になり、高齢化のピークが到来する2025年に向けて、人口急減時代の医療・介護の供給体制をいかに構築していくか」という問題の中、地域医療構想(ビジョン)を円滑に進めるべく、同構想とリンクした改定になるだろうと予測する。「地域医療構想(ビジョン)」とは言うまでもなく、各都道府県における地域の医療需要の将来推計であり、次期改定では、同構想の内容が地域医療計画に盛り込まれることは必至だ。各都道府県では医療機関も参加する「地域医療構想調整会議」が開催され、地域医療体制の現状と、将来目指すべき姿の認識共有、課題の抽出、病床機能の分化と連携のあり方についての議論がなされるが、そこでは「地域医療介護総合確保基金」を活用した具体的な事業の検討も行われる。

地域医療介護総合確保基金

 実際に大阪府では昨年末、急性期の一般「7対1」病床から「地域包括ケア病棟」や「緩和ケア病棟」に転換した場合に、同基金から4億2875万円の予算が付けられている。「7対1」から「地域包括ケア病床」に転換した時は、1ベッド当たり基金から50万円が支援される。例えば同会議において、当該医療圏で急性期病床が供給過剰の一方、回復期リハ病床が極端に不足しているという事態が明らかになった場合、ある病院が急性期病棟を回復期リハに転換することに同意したとする。その病院が病床面積6.4m2を確保するためのリニューアルが必要になった時は、同基金が活用されることも想定できる。

 同基金は医療だけでなく介護事業にも適用されるので、医療法人が地域で不足している「24時間定期巡回サービス」等に手を上げた場合にも、基金活用の可能性は高い。病院にとって不安な「稼働していない病床」への対応は、都道府県医療審議会の意見聴取を経て、公的医療機関に対しては当該病床の削減を「命令」することが可能になる一方で、公的医療機関等以外の医療機関には「要請」に留まる。公的医療機関に対する「命令」と、それ以外の医療機関に対する「要請」の考え方は、「病床転換」においても、「不足している医療機能の提供」に対しても同様である。この「命令」と「要請」の違いは大きい。民間病院に比べて国公立病院の場合は、強制的な病床の返上や転換等も考えられ、厳しい状況に追い込まれる可能性が高いのではないだろうか。

更に厳格化されるであろう急性期病院の平均在院日数と重症度等要件

 具体的な改定の内容に移ろう。今後、医療需要に合わせて急性期病床の削減が進められていくことになるが、6月10日に中医協で医療機関の平均在院日数(平成26年調査)のデータでは、「7対1」入院基本料届出病院の平均在院日数は最頻値が14日、平均値が12.8日だった。更に3月の中医協資料で「7対1」及び「10対1」一般病棟入院基本料届出医療機関の平均在院日数が約13日と16日、標準偏差は2.8日と3.9日だった。

 国が「7対1」病床を絞り込んでいく方向性を踏まえ、厚生労働省がこれらのデータを出して来たことについて「7対1」には平均在院日数が18日以内との要件が設けられているが、次期改定では更に短縮される可能性がある。「7対1」を短縮する以上は「10対1」に対しても平均在院日数の要件が厳しくなる可能性が高いのではないだろうか。更に一般病棟用の重症度、医療・看護必要度(以下、同必要度に略)に関しては、同必要度のA項目から心電図モニターが外される可能性が高く、医療機関は心電図モニターを外されてもA項目が維持できるかどうか事前に確認した方が良いだろう。3月の中医協総会で示されたデータでは「同必要度の高い患者の割合について、医療機関において一定のバラつきが見られるが、バラつきの幅は「7対1」よりも「10対1」の方が大きい」ことから、来年から「7対1」と同様に同必要度要件が導入される可能性がある。「10対1」の病院も現段階から、入院患者の同必要度を計測し、備えておくことをお薦めしたい。

重症度割合を18~20%に引き上げ、B項目は大幅見直しか?!

 さらに、「急性期病床の機能分化を進めるために、緊急性の高い患者や高度な医療を要する患者の受け入れを評価するとともに、前回改定の答申付帯意見も踏まえ、更に検討すべき」との中医協での論点がある。「手術後の患者について同必要度の基準に該当する患者は、手術当日で45%程度、手術後3日には術前と同程度の割合になっており、全身麻酔手術の実施件数の多い医療機関で該当患者割合が低く、手術の種類の違いにより平均在院日数に違いが見られた」との課題がある中で、例えば、「手術後3日目以内ならA項目・B項目関係なく重症患者にカウントする」「救急搬送された患者が3日までなら無条件で重症患者にカウントする」等という変更の可能性もある。

 厚生労働省が、次々とこうした資料を出してきた背景を踏まえることも必要だ。前回改定では「7対1」に関して、「A項目2点以上かつB項目3点以上が15%以上」を要件とし、介助の必要性を評価するB項目が変更されることはなかったが、15%以上より要件が引き上げられる可能性も高い。

 同必要度のB項目に関しては大幅な変更の検討が行われそうだ。「寝上がり」、「起き上がり」、「座位保持」は相関関係が強いため、次期改定では「寝上がり」一つに集約し、「起き上がり」と「座位保持」が項目から外れることになると想定される。更に注目したいのは、「認知症患者の急性期病床への受け入れ」に関してだ。現在、B項目では、一般病棟では対象外だが、ハイケアユニット用で評価項目の対象になっている「診療・療養上の指示が通じる」、「危険行動」の項目を、一般病棟でも、評価の対象とすることが予想される。実際に入院医療等の調査・評価分科会資料では「7対1入院基本料対象病棟において、認知症の有無と看護提供頻度の関係を見ると、認知症ありの患者に対する看護提供頻度は高く、B項目2点以下の患者においても同様の結果が表れている」としている。認知症患者を積極的に受け入れる病院はB項目で評価され、経営的にも恩恵を受けることになる可能性は高いだろう。

※8月27日(公社)日本医業経営コンサルタント協会兵庫県支部主催「抑制策が見えてきた平成28年度診療報酬改定、その大胆予測と病院経営対応策」セミナーにて取材、構成。

(医療ジャーナリスト:冨井 淑夫 編集:株式会社日本経営エスディサポート)

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