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続・2016年度診療報酬改定をうらなう
~プラスに転じるキーワードは「在宅復帰」「退院支援」「退院調整」と「介護との連携」

「総合入院体制加算」は、全体的な要件見直しの可能性

 今回は前号に続き次期改定について、具体的な診療報酬項目の内容に私見を交えながら個別に検証したい。

 2010年の診療報酬改定で創設され、より高度急性期を目指す医療機関を評価した「総合入院体制加算」は、前回改定では上位ランクの(Ⅰ)240点と、従来通りの(Ⅱ)120点の二段階になった。中医協のデータによると、2015年5月段階で全国の届出医療機関数は同加算(Ⅱ)が311施設と増加している一方で、(Ⅰ)の届出は4施設に留まっていたが、次期改定では同加算の(Ⅰ)と(Ⅱ)の要件が何れも変わる可能性があるのではないだろうか。

 例えば(Ⅰ)に関しては「化学療法が年間4000件」という要件を満たすことが困難な医療機関が多かったことから、この要件が緩和される可能性がある。更に中医協では同加算に関する議論で、「A項目の該当患者割合は高度な医療を提供する密度が高い医療機関の指標にもなる」との意見が出されたことから、次期改定では「A項目の該当患者割合」等が、新しく要件として追加されるかもしれない。他の全ての要件を満たしていても、精神病床を有しないため同加算(Ⅰ)が届出出来ない等の矛盾も露呈しており、同加算については全体的な要件の見直しがありそうだ。新規に同加算(Ⅱ)を届出する場合は地域包括ケア病棟や療養病棟の届出を行なっていないことが条件であり、(Ⅰ)の場合はそもそも急性期と、地域包括ケア病棟や医療療養病棟とのケアミックス型は認められない。この点は地域における需要と、病院の今後の展開を見据えて、「総合入院体制加算」算定の是非を慎重に検討することが必要だろう。

 さて今年3月4日の中医協資料で回復期リハビリテーション病棟の病床数が、最近10年間で3倍以上に増加していることが示された。更に「回復期リハビリテーション病棟で提供されるリハビリの提供単位数の急増と、同病棟における入院患者の入院時のADLに大きな多様性が認められる」ことが明らかにされた。要するに回復期リハビリテーション病棟については、「病床数やリハビリ提供単位数が急激に伸びている一方で、受け入れる患者像やリハビリの効果に関しては医療機関間で大きなバラつきがある」という課題である。「回復期リハの(Ⅱ)と(Ⅲ)に関しては、評価のあり方として、いずれは包括制が導入される可能性も否定できないだろう」との見方をする医療ジャーナリストもいる。

 では、回復期リハ(Ⅱ)と(Ⅲ)が包括化された場合に、地域包括ケア病棟との役割の違いが、どうなるのかとの問題が浮上する。昨年から回復期リハ病棟と地域包括ケア病棟の機能が一部重複することから、病院の中には両方の病棟のメリット・デメリットを慎重に見極め、両てんびんにかけて選択する動きが出ていた。将来的に「この2つが集約化されていく」との見方をする専門家もおり、今後の行く末は悩ましい状況だ。何れにせよ、回復期リハ病棟の(Ⅱ)と(Ⅲ)が出来高でなくなった時の病院経営における影響は小さくはない。また前回改定で、回復期リハ(Ⅰ)が高く評価されたものの、看護必要度基準の厳格化等で、(Ⅰ)を届出出来ない病院もあった。実際に(Ⅰ)が取れなければ前回改定で新設された「体制強化加算」の算定も不可能だ。

施設要件に「自宅復帰率」導入か?!「退院支援加算」新設の可能性

 また、地域包括ケア病棟における疾患別患者データの資料(6月10日中医協総会)によると同病棟は「急性期後の受け皿の役割が期待されてきたが、実際に入院している患者は「7対1」、「10対1」病棟の入院患者と比較して、骨折、外傷等リハビリ目的によるものが多かった。更にリハビリ提供単位も一人・1日平均、2.4単位である。」ことが分かった。厚生労働省が、こうしたデータを出して来たことからも、今後、回復期リハ病棟の一部と、地域包括ケア病棟の役割の集約化を巡る議論が活発化していくことが考えられる。

 更に在宅復帰率では「7対1」病棟の在宅復帰率の平均が92%で、施設要件である75%を大きく上回っており、地域包括ケア病棟も施設要件の70%を大きく上回る。「80~90%」が最も多く42%を占め、「90~100%」という施設も31%という実態が、中医協の資料により明らかにされた。要件を十分にクリアしているこの数字から、「7対1」や地域包括ケア病棟の場合は、在宅復帰率の要件が今後、恐らく80%以上という方向に向かうのではないだろうか。また更に現状の在宅復帰率は病院から施設に移行した場合でも認められていたが、その中で「自宅復帰率」という考え方が要件化される可能性も高い。そもそも、地域包括ケア病棟は、役割として在宅復帰支援を行う機能が期待され、入院患者の退棟先は「自宅」であるとの考え方が根強くあることからも、「自宅復帰率」が要件化されるのは当然の流れと言えるのかもしれない。

プラスに転じるキーワードは「在宅復帰」「退院支援」「退院調整」と「介護との連携」

 次期改定の数少ないプラス項目として挙げられるのは、患者の「在宅復帰」、在宅移行に繋がる「退院支援」、「退院調整」、「介護との連携」に係る項目等ではないだろうか。

 「地域連携室・退院支援室の設置状況」では病棟機能別に①地域連携室及び退院支援室を設置②地域連携室のみを設置③退院支援室のみを設置④何れも設置していない―の4つに分類した設置状況が示された。その結果から“「7対1」や「回復期リハ」、「地域包括ケア」等の病棟を届出している医療機関は、地域連携室と退院支援室の両方を設置している医療機関の割合の高い”ことが分かる。更に「病棟への退院支援職員の配置状況」、「病棟への退院支援職員の配置による効果」(下図)等のデータを出して来た背景から、次期改定では退院支援職員を専任(または専従)で配置している病院に対して加算を新設する可能性は高い。要するに地域包括ケア病棟や回復期リハ病棟等を持つ病院は、自院だけでなく、基幹病院の在宅復帰率や在院日数も考慮した「後方支援機能」の充実を図っていくことが必要だろう。そのためには退院支援専門職員をキーパーソンにして、関係部門が定期的に集合するベッドコントロールミーティングの実施が不可欠となっていく。実際に筆者が知る地方民間病院では、昨年から中堅医事課職員を専任にして、毎日、午後にベッドコントロールミーティングを行っているところもある。

病院への退院支援に専任 専従の職員の配置 病棟への退院支援職員配置による効果

 こうした流れから、次期改定で、退院支援職員を専任(または専従)で配置している場合に「退院支援加算」(仮称)のような新機軸が導入されることが予測される。アメリカの病院にあるような「ディスチャージ(退院)・プランナー」のような職種だが、日本の中小民間病院はこうした経験・知識を持った専門職が圧倒的に不足している。人材育成が求められる実状からも、新設加算が導入される意義は大きい。

 10月7日に行われた中医協総会で、「在宅医療の提供体制」に関する資料が発表され、いよいよ在宅医療に特化した「在宅医療専門診療所」(仮称)の制度化が実現しそうだ。次期改定では、どのような施設要件が設定されるのかは大変興味深い。今後、年末にかけての中医協での議論に注視していきたい。

※(公社)日本医業経営コンサルタント協会兵庫県支部主催「抑制策が見えてきた平成28年度診療報酬改定、その大胆予測と病院経営対応策」セミナーにて取材、構成。

( 医療ジャーナリスト:冨井 淑夫 編集:株式会社日本経営エスディサポート)

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