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地域住民に「かかりつけ」機能を積極的に「広報」する!
~「かかりつけ」機能の整備は喫緊の課題

 2016年診療報酬改定では、「特定機能病院及び一般病床500床以上の地域医療支援病院」に対して、現行の選定療養費に加えて、紹介状なしの初診に対しては5,000円、再診時には2,500円の財政負担がかかるようになりましたが、外来受診の仕組みとして患者はまず、身近なかかりつけ医に診てもらい、必要な時だけ大病院に行くという流れを習慣付けてもらうことが改定の狙いです。高齢化に伴って増大する医療ニーズに対応していくには、限られた医療資源を有効に使うための工夫が不可欠です。そのため医療の仕組み全体を効率化していくことが避けられません。

 国が「かかりつけ医」の機能や役割を診療報酬で規定していこうとする背景には、前述した効率化と連動した地域包括ケアシステムの構築があります。厚生労働省は同システム構築の目標年次である2025年に向けて、全国5,712ヵ所に同システムの整備を目指しています。そして今改定では医師だけでなく、薬剤師、更には歯科医師の「かかりつけ」を目指す新機軸が導入されました。厚生労働省は、これら「かかりつけ」機能を持つ医師、歯科医師、薬剤師が連携して、在宅の高齢者が病気で入院しても、状態が安定すれば在宅に戻し、様々な医療・介護資源との連携の下に在宅療養を支えていく仕組みづくりを目指しています。その地域包括ケアシステムのコーディネーター役を期待されるのは、市町村と地域医師会です。先駆事例として知られる千葉県柏市の「柏プロジェクト」では、柏市と柏市医師会が中心となり“多職種協働”の仕組みづくりを進めてきました。しかし、全国的に同システムの仕組みが完成している事例は未だ少数で、整備が本格的に進むのはこれからです。

 今改定では、小児科医が減少傾向にある中で医療提供体制を確保するために、外来を継続的に受診している患者(家族)の同意を得て他の専門医療機関との連携や、健診や予防接種等、適切な管理や助言等の総合的な役割を果たした場合の「小児かかりつけ医」の点数が新設されました。施設基準の選択要件の中に「幼稚園の園医または保育所の嘱託医への就任」があるように、病児保育の普及等も目指し、少子化時代に向け多彩なメッセージがこめられた社会的に有意義な項目ではないでしょうか。

 更に注目したいのは、複数疾患を有する認知症患者に対する主治医機能の評価が新設されたことです。「地域包括診療料・地域包括診療加算」届出の医療機関を前提に、「多剤投与の是正」を着眼点として、1処方についての薬剤数の多い患者は算定対象外となります。

 しかし、このように多様な「かかりつけ」機能を評価する診療報酬が新設されたものの、これらの施策が厚生労働省の狙い通りの効果を生むかどうかは、まだまだ未知数です。

 そもそも患者が大病院に集中しがちなのは、近くにいる「自分に合った医師や薬剤師」を選択するための情報不足があるのではないでしょうか。実際に地方では過疎化・人口減少が深刻化。クリニックや他の医療資源も乏しく、選択の余地がない地域も存在します。診療報酬で評価したとしても、医療の「質と量」が伴っていなければ、患者は自己負担に見合った十分なサービスを受けることが出来ません。そのため、専門外の疾患にも対応可能な総合診療医の育成も、同時に進めていかなければなりません。

 まずは「かかりつけ」の医師・薬剤師・歯科医師を問わず、地域住民に向けた適切な情報発信が不可欠です。「在宅医療や24時間対応の実施」を院内掲示することや、小規模なクリニックであってもホームページや積極的な地域活動によって、「かかりつけ」機能を的確に「広報」していくことが肝要です。

 第5次医療法改正で、インターネットによる医療広告の扱いが規定されました。そこでは医療機関が自ら開設するホームページは、「広告」ではなく「院内広報」と同じ扱いになりました。要するに、ホームページを「訪問し、閲覧する」行為自体を、「患者がそのクリニックを選択して、扉を開いた」という選択行動としてみなされた形となるため「院内掲示されている当院からのお知らせ」と同じ解釈になります。

 但し、

  • ・「他者のホームページから自院のホームページに誘導する」バナー(リンク)広告
  • ・検索結果などに連動して表示されるスポンサー等に関する情報
  • ・検索サイトの運営会社に費用を支払うことにより上位に表示される検索結果

等は、「広告」として取り扱われますので、注意が必要です。
(医療機関のホームページの内容の適切なあり方に関する指針 (医療機関ホームページガイドライン)より抜粋)

広告可能な事項について

禁止されている広告について

 また、厚生労働省では8月3日「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」を開催し、「医療機関のウェブサイト等の取り扱い案」を議論。そこでは、新たに当面の具体的な方策案として、次の5点が示されています。(医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会(第3回 8/3)より抜粋)

  • 1.円滑な施行に資するため、新たな規制内容をガイドラインで明確化する
  • 2.プロバイダなどの広告掲載基準に規制(ガイドラインを含む)の明記を求め、違反広告の削除によりインターネット上の規制の遵守を徹底する
  • 3.厚生労働省のウェブサイトにおいて注意喚起・相談窓口一覧ページを作成する
  • 4.厚生労働省は美容医療サービスを受けるに当たって注意すべき事項や相談窓口に関するチラシを作成し、美容医療団体等とともに、医療機関に据え置くなどの方法により、消費者、患者等への注意喚起を実施する
  • 5.医療安全支援センター、保健所、関係団体、NPOによる医療安全講演会などを通じた患者教育・消費者教育を推奨する

今後もガイドラインを注視しながら、「かかりつけ」機能の「広報」を進めていく必要があります。

( 医療ジャーナリスト:冨井 淑夫/編集:株式会社日本経営エスディサポート)

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